指の合間を光がすべりおちてゆく
昨日踊った彼女の胸も
遠いい日々 眠った彼女の腕の中も
空に舞って薄明りを歌う
走り出したウサギのゆくえを俺は知らない
月の波を泳ぎながら震えるまぶたを覆っている
指と夢に飽いて
ぼんやり煙草を吸いながら
あいみるちゃの煙に溶けてしまいたいのに
触れるものみな冷たい痛みで分かたれてく
俺の痛みでさえ 昨晩の頭痛の
なごりのよに おもえてくる
明けがた近く 夢で見た船は
*を残し 消え去った
激しい空虚にさいなまされながら
*は骨にしゃぶりつく
唇からどす黒い血がしたたる
が、いくら食べても喰い足りず
獲物を求め 導化した振子を揺らす
あの船で行けたら俺は勇士になっていたろう
と*はぼんやり考えながら生暖かい雨を浴びる
雨水を吸収しすぎた服が鎖のよに重たく巻きつき
*の身体をねじ曲げていく
見上げる力もつきて
しなだれかかるイバラに腹を抱えて笑い
あの船はどこへ行ったろう?
俺の性器と切符を交換できないだろうか
*は微かに不臭が漂う身体に
保障のない毒をしたたらせ
明けがた前の船に乗り込む
それが朝のない船でもおかまいなしに
歓声をあげる
しゅっぱぁつ
旅に出よう
夢を見よう
愛しあい
嘘をつこう
明けがた近く 夢で見た船は
*を残し消え去った
小説から一部/抜粋
月
が 俺を抱く